言葉と音楽に宝石がちりばめられた名作 イノック・アーデン

言葉と音楽に宝石がちりばめられた名作

Tennyson's Poetryシェイクスピア以降英国最大の桂冠詩人、A・テニスンが19世紀後期に発表した「イノック・アーデン」は発売初日に1万7千部を完売するほどの人気を博した書籍でした。

テニスンの海に対する愛着は、少年時代から終生持ち続けていたものであり、「少年水夫」や「航海」、「ユリシーズ」など、海や舟遊びを題材として多くの名作を書き上げてきました。

中でも「イノック・アーデン」は、思想と表現とを美しく調和させ、情愛と哀愁とを最高水準に表現した、世界的名篇の一つと言えるでしょう。

日頃、その詩作においては、一言一句を慎重に練り直すテニスンとしては実に珍しく、僅か二週間という短期間でこの作品を書き上げたといいます。

その後、当時著名だった舞台俳優エルンスト・フォン・ポッサールトは音楽を伴った「イノック・アーデン」の舞台上演を望み、ワーグナー以降ドイツを代表する作曲家といわれるR・シュトラウスに作曲を依頼しました。

人物や場面の心理的内容を描写する音楽を伴って、メロドラマというかたちで台詞の朗誦をおこなう劇の誕生となったのです。そうして、ポッサールトはシュトラウス本人をピアノ伴奏者にして朗読劇を各地で行い、ひじょうな人気を集めました。

詩のもつ美しい言葉に音符が載せられた、歌曲やオペラとも違う、『イノック・アーデン』の魅力の世界を公演いたします。テニスンの叙事詩とシュトラウスの音楽が構成する、言葉と音楽の幸せな関係を感じ取っていただけたら、と願います。










A.テニスン
(1809年8月6日 - 1892年10月6日)

テニスン肖像画ヴィクトリア朝時代のイギリス詩人。美しい措辞と韻律を持ち、その作品は今なお日本でも愛読されている。

リンカンシャー州サマズビーに牧師の子として生まれる。1831年までケンブリッジ大学に学び、1827年兄のチャールズやフレデリクとともに詩集『Poems by Two Brothers』を出版したが、単独の詩集『Poems Chiefly Lyrical』(1830年)はジョン・キーツの影響を示している。

次いで1833年『シャロットの妖姫 The Lady of Shalott』を発表したが酷評され、以来10年間沈黙する。

1832年に学友のハラム(Arthur Henry Hallam)と大陸を旅行するがその翌年にハラムが急死し、強い衝撃を受けて彼を弔う長詩『In Memoriam A.H.H.』を書き始め、十数年にわたる自己の思想の成長をも織りこんで1849年に完成させた。

1842年『Poems by Alfred Tennyson』で名をなし1845年に年金を授与された。1847年に叙事詩『The Princess』を発表し、1850年ウィリアム・ワーズワースの後継者として桂冠詩人となった。

1855年『Maud』、1859〜64年にかけてアーサー王伝説に取材した『Idylls of the King』や、哀れな水夫の物語詩『イノック・アーデン Enoch Arden』(1864年)、『Locksley Hall Sixty Years After』(1886年)を発表し、1884年にはテニスン男爵に叙せられた。

1889年の短詩『砂州を越えて Crossing the Bar』は辞世の歌として名高い。

1892年に死去し、ウェストミンスター寺院に埋葬された。

R.シュトラウス
(1864年6月11日 - 1949年9月8日)

ストラウス肖像画ドイツの後期ロマン派を代表する作曲家。交響詩とオペラの作曲で知られ、また、指揮者としても名高い。

1864年6月11日にバイエルン王国のミュンヘンで、ミュンヘン宮廷歌劇場の首席ホルン奏者であったフランツの子として生まれた。

シュトラウスは幼いときから父親によって徹底した、しかし保守的な音楽教育を受け、非常に早い時期から作曲を始めた。

1881年には指揮者のハンス・フォン・ビューローに認められ、84年に彼の率いるマイニゲン宮廷管弦楽団のために「13の吹奏楽器のための組曲 Op.4」を書き、自らの指揮で初演して高い評価を得た。

85年にビューローがこの楽団を去るとシュトラウスがその後任となり、以後、各地の歌劇場や管弦楽団の指揮をしながら作曲活動を続けた。

しかし、1933年にナチスがドイツの政権をとると、シュトラウスは政治問題に巻き込まれることになった。

シュトラウスは33年に芸術保護のためのドイツ音楽局の総裁に迎えられたが、ユダヤ人の作曲家や作品の件で当局と衝突があった矢先、シュトラウス自身がユダヤ人の台本によるオペラ「無口の女 Op.80」(34年)を作曲したことでとがめられ、彼の評判作のオペラ「ばらの騎士」(09年)以外の上演を1年間禁じられた。

シュトラウスは仕方なくミュンヘン近郊の山荘にこもったが、36年以後は当局の要請や命令があるときは指揮に出かけたりした。

40年には日本建国2600年を祝う管弦楽曲「大日本帝国紀元2600年祝典音楽 Op.84」を作曲しており、この曲は同年、東京の歌舞伎座で初演されている。

山荘で終戦を知ったシュトラウスは47年にはロンドンに指揮の仕事ででかけ、その年末から健康を害し、次第に衰弱し、心臓疾患で49年に他界した。

シュトラウスは広い分野に多くの作品を残しており、彼の音楽はオペラ、交響詩、歌曲が主流で、オペラ「サロメ」(05年)、「エレクトラ」(08年)はワーグナーの影響を受けているといわれるが、「ばらの騎士」には古典派的な作曲技法がもり込まれており、保守的になっている。

知れば知るほど、その魅力を増していく
「イノック・アーデン」の世界。

ここでは、そんな「イノック・アーデン」をより深く知ることのできる本・CDをご紹介します。

  • 岩波文庫「イノック・アーデン」
    岩波文庫


    テニスン 作/入江直祐 訳/岩波書店
  • 「イノック・アーデン」
    岩波文庫


    テニスン 作/原田宗典 訳/岩波書店
  • TENNYSON'S POETRY(原語)
    TENNYSON'S POETRY(原語)


    出版 W・W・NORTON&COMPANY
  • グレン・グールド・エディション
    R・シュトラウス作品集
    曲目:ピアノ・ソナタ、イノック・アーデン 他
    演奏:グレン・グールド(ピアノ)/クロード・レインズ(朗読)
    レーベル:ソニー レコード
  • メロドラマ 朗読とピアノのための作品集
    曲目:イノック・アーデン(R・シュトラウス)、旗手クリストフ・リルケの愛と死の歌(ウルマン)
    演奏:フィッシャー・ディースカウ(朗読)/ブルクハルト・ケーリング(ピアノ)
    レーベル:ドイツ・グラモフォン
  • Enoch Arden
    演奏:JON VICKERS(朗読)/MARC-ANDRE´ HAMELIN(ピアノ)
    レーベル:VAI AUDIO
  • The Melodramas―Enoch Arden/The Castle by the Sea
    演奏:Paul Schmidt(朗読)/Yvar Mikhashoff(ピアノ)
    レーベル:mode
  • イノック・アーデン
    演奏:パトリック・スチュワート(朗読)/エマニュエル・アックス(ピアノ)
    レーベル:SONY CLASSICAL
    当CDは、昨年ロンドンで録音された、最新モノ。 パトリックは、スタートレックやXメンなどに出演、ロイヤル・シェイクスピアカンパ ニー出身の名優。アックスは、ロシア生まれで、現ニューヨーク在住の世界的ピアニスト。ベートーヴェ ンやブラームスなどに定評がある。
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